OUGI Leathersの
仕立てと製作の工夫
OUGI Leathersの製品がどのように作られているかを、設計から仕上げまでの流れに沿ってご紹介します。
ご購入前に、ものづくりの背景やこだわりを知っていただけると嬉しいです。
■設計について
OUGI Leathersでは、見た目のシンプルさと、使いやすさ・丈夫さのバランスを大切にしながら設計しています。
たとえば、一つのパーツが複数の役割を担うよう工夫することで、無駄な重なりを減らし、軽さと機能性の両立を図っています。
製品ごとに、使いやすさ・丈夫さ・整った見た目のバランスを考えながら、「ちょうどいい形」を探し出し、設計に落とし込んでいます。
■手断ちについて
OUGI Leathersでは、革の裁断に革包丁を使った「手断ち」を採用しています。 一つひとつのパーツを引き切りで裁つことで、断面の角度や仕上がりを細かく調整することができます。
革は、表面の銀面が繊維密度の高いしっかりとした層、裏側のトコ面がやや柔らかい層で構成されています。 そのため、貼り合わせる面の組み合わせによっては、断面の高さや密度に差が出やすく、仕上がりにも影響します。
手断ちでは、パーツの重なり方や貼り合わせる面に合わせて、断面の角度をほんのわずかに調整することができます。 銀面とトコ面を貼り合わせるときでも、後の磨きで段差が出にくくなるような裁ち方を意識しています。
こうした調整の積み重ねが、見た目の美しさだけでなく、使い心地やコバの仕上がりにもつながっていると感じています。
■トコ面の処理について
革の裏側にあたるトコ面は、銀面に比べて繊維が粗く、毛羽立ちやすい部分です。 特に、厚みを調整した革では繊維がむき出しになっているため、そこからホコリや汚れが付着しやすく、摩耗や劣化の原因になりやすいため、注意が必要です。
開閉の動きが多い場所や、コバに近い部分が未処理のままだと、使用にともなう摩擦で傷みやすくなるため、注意が必要です。
OUGI Leathersでは、こうした弱点を少しでも減らすために、製作の段階でトコ面の処理を行っています。 専用の処理剤を使って繊維を落ち着かせたり、もう一枚革を貼り合わせて強度と見た目を両立させたりと、製品に応じて方法を使い分けています。
■菱目打ちについて
縫い穴を開ける工程には、「菱目打ち」という道具を使っています。これは、先端が菱形になった刃を革に打ち込んで、縫い糸が通るための穴をあけるための道具です。
OUGI Leathersでは、仕上がりのバランスや力のかかる場所を考慮して、穴の位置を一つひとつ調整しながら開けています。
特に負担のかかる部分では、菱目の幅いっぱいに打てる位置を見極めて穴を開けることで、革に無理な力がかからないよう配慮しています。 また角の部分では、ステッチが必ず角の頂点に来るように位置を調整し、縫い目の向きが自然に揃うことで、仕上がりが美しく見えるようにしています。
穴がきれいに並んでいれば、糸を通したときにも美しく揃い、仕立て全体の印象を整えることができます。
一見すると単純な工程に見えるかもしれませんが、縫い上がったときの形や力のかかり方まで考えたうえで、慎重に進めている作業のひとつです。
■手縫いについて
裁断されたパーツは、蜜蝋を染み込ませた糸と針を使い、一針ずつ手縫いで仕立てていきます。
1本の糸の両端に針をつけ、左右から交差させながら縫っていくことで、糸がしっかりと革に密着し、縫い目がほどけにくい構造になります。
縫う前には蜜蝋をしっかりと糸に染み込ませています。これにより縫い進めるときの摩擦が抑えられ、革に糸がしっかりと密着しやすくなり、使用時の傷みや緩みにも強くなります。
縫いながら目視で確認しつつ、一針ごとに糸の締め具合を微調整できるのも、手縫いならではの利点です。 場所によって少しだけ力加減を変えることで、縫い目が無理なく収まり、全体の仕上がりも整いやすくなります。
また、仕上がり後も糸の毛羽立ちが抑えられ、見た目にも自然なまとまりが生まれます。
見た目では伝わりにくい部分も多いですが、強度やバランス、仕上がりの美しさを意識しながら、手で縫うからこそできる細かな調整を積み重ねています。
■コバ処理について
コバとは、革の断面部分のことを指します。見た目の仕上がりだけでなく、使い込む中での耐久性や快適さに関わる重要な部分です。
OUGI Leathersでは、仕上がりに求める持ちや風合い、かけられる手間のバランスを見ながら、製品ごとに適したコバの仕上げを選んでいます。
ワックス処理: 自作のコバワックスを使い、熱したコテで溶かしながら塗り込んで圧着します。 仕上がりに深みが出るため、特に力がかかる部分や長く使われる製品に向いています。 使用中に軽微な毛羽立ちが出た場合も、布で磨くことで整えることができます。
トコノール処理: 市販の処理剤を塗って磨くことで、繊維を落ち着かせ、自然な艶を出しながら仕上げています。
ふのり処理: 素朴な仕上がりや自然な風合いを重視したい製品では、天然素材であるふのりを使った処理も行っています。 やや強度は落ちますが、独特の柔らかさを持った表情に仕上がります。
コート処理: コバの表面を丈夫な被膜でコーティングする方法です。タンニン鞣しとクロム鞣し、どちらの革にも使える方法です。
どの処理も、下地である断面の整え方から始まり、塗布・磨き・乾燥といった工程を丁寧に積み重ねています。 断面の状態を見ながら、手をかけるべきところには時間を惜しまず、仕上がりだけでなく製品としての持ちも大切にしています。
※タンニン鞣しは植物の渋でなめした革で、経年変化が楽しめるのが特長。クロム鞣しは塩基性硫酸クロムを使ったなめしで、柔軟性や耐水性に優れています。
■貼り合わせについて
一部の製品では、革を貼り合わせることで、裏面(トコ面)が見えないように仕上げています。 これにより見た目が整うだけでなく、強度の向上や、経年使用によるトコ面の劣化も防ぐことができます。
とくに内装パーツには、別の革を重ねた「総革張り」に近い構造を採用することもあり、 表からは見えない部分にも手をかけることで、長く心地よく使っていただけるよう心がけています。
■その他の取り付け・仕上げについて
ホックやファスナーといった金具を使う製品では、取り付け部の補強だけでなく、金具の向きや開閉のしやすさにも気を配っています。 革の厚みや構造に合わせて下地を足すなど、長く使っても破れが起きにくいようにしています。
ファスナーも、使いやすさと見た目のバランスを考えながら、無理のない、丈夫な取り付けになるよう工夫しています。 また、製作後は全体を軽くブラッシングして、細かな粉やホコリを払いながら仕上げています。 少しでも心地よい状態でお届けできるよう、最後まで丁寧に整えています。
一つひとつの製品に、こうした工程を経て形づくられた背景があります。
長く使うものだからこそ、作り手としてできる限りの手間と工夫を込めてお届けしています。