個人でも実現できた「実用新案の出願」

個人でも実現できた「実用新案の出願」

手のひらに収まるサイズの二つ折り財布(Kai)を持つ様子。黒のブッテーロレザーを使用し、丁寧な手縫いステッチが際立つ。


使いやすさへの工夫を、しっかり形にしてみた記録

はじめに

日々のものづくりの中で、「これは本当によくできた」と思える構造に出会うことはありませんか?
私自身、ある構造に手応えを感じ、「これを守る手段が必要だ」と思ったことがきっかけで、実用新案制度を使った出願に挑戦してみました。

最初は「専門的すぎて無理では?」と不安もありましたが、調べながら一歩ずつ進めていく中で、個人でもここまでできるという実感に変わっていきました。

この記事では、私が実際に取り組んだ出願準備の流れや、途中で気をつけた点などを記録としてまとめています。
「自分の考案をしっかり守りたい」と思った方の参考になれば幸いです。


■ 実用新案とは?

  • 「アイデア(発明)」ではなく、構造や形状の工夫を保護できる制度

  • 特許よりも出願のハードルが低く、個人や小規模のものづくりにも適している

  • 内容の審査は行われないが、新しさ(新規性)と内容の明確さが求められる


■ 出願までの流れ(私のケース)

1. 構造を図にする

実際の製品の形状や動きを手描きでラフに描き出し、どこに工夫があるかを目に見える形にしました。
細かく綺麗でなくても、伝わることが大切です。

2. 類似技術を調査

J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)を使い、似た構造や既存技術がないかを検索。
重要なのは、自分の構造がどう異なるのかを自覚することでした。

3. 請求項の草案を考える

どの部分を「権利として守りたいか」を明確にし、効果や構造の特徴を言語化しました。
専門用語よりも、自分の言葉でわかりやすく表現することを優先。

4. 明細書・図面の準備

「さくっと書類作成」という無料ツールを使用しながら、明細書・図面・請求項などを順に整備。
画像ファイル(JPGなど)と説明文の整合性にも気を配りました。

5. 電子出願

出願ソフト(例:i5.30)を用意し、マイナンバーカード+ICカードリーダーを準備。
必要ファイルを揃え、オンライン上で出願データを送信して完了となります。


■ 実際にやってみて感じたこと

「さくっと書類作成」というツール名に少し期待しすぎましたが、内容を調べながら少しずつ入力していく形で、しっかり取り組めば確実に形にできます
途中で、「まず請求項を決めてから他の項目を進めるほうがスムーズだったかも」と気づきましたが、それも含めて良い学びになりました。


■ 出願時に意識したポイント

【構造の言語化】

感覚や印象で済ませず、「どうなっているから便利なのか」を言葉で説明できる状態にすることが必要でした。

【表現の幅と限定のバランス】

一部の形状に限定せず、応用可能な構造であることを示しつつ、表現が広がりすぎて既知技術と見なされないよう慎重に記述しました。

【請求項の構成】

実用新案では、守りたいポイント(請求項)が複数あっても費用は同じです。
私自身、2つの異なる構造がそれぞれ主役になり得ると考え、両方を独立項として出願しました。
この柔軟さも、実用新案ならではの魅力だと思います。

【審査がない=内容勝負】

審査がないぶん、「提出書類そのものが命」です。
あいまいな記述や抜けがないよう注意し、広く・強く守れるような言葉選びを意識しました。


■ 出願してみての所感

専門知識がなくても、「自分の工夫をきちんと残したい」という意思があれば、手順を追って進められると感じました。
ネットでの検索と無料ツールを組み合わせ、わからないことはひとつずつ確認する……そんな地道な積み重ねで、ここまでたどり着けました。


■ おわりに

登録が確定したわけではありませんが、この経験を通じて「構造を言葉で説明できるようになる」ことの大切さを実感しました。
伝え方や向き合い方が、大きく変わったように思います。

なお、今回出願した構造を採用した製品は、今後クラウドファンディングでの発表を予定しています。
ご興味のある方は、楽しみにお待ちいただけると嬉しいです。

無事に登録が完了した際には、その続報もまたお知らせします。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

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