オーダーメイド製作記|携帯灰皿カバーを仕立てました

オーダーメイド製作記|携帯灰皿カバーを仕立てました

先日、工房にふらりと訪ねてくださったご近所のお客様から、少し変わったご依頼をいただきました。
携帯灰皿を入れるための「革のカバーを作ってほしい」という内容です。

携帯灰皿そのものではなく、その“カバー”を革で仕立てるというご相談は初めてで、なるほど、そういう使い方もあるのかと感じました。


形は灰皿に合わせて、一から設計

立てて斜めからの画像

灰皿の存在が見えにくく、手に持ったときの収まりも良いように、全体を覆う構造で設計しました。

平置き45°からの画像

角をなめらかに整え、厚みとのバランスを取りながら手馴染みの良さを意識しました。


厚みを活かしたコバ構造

平置きでステッチを撮った画像

ご希望により革はプエブロのブラックを使用し、糸も同系色で統一。
丁寧な手縫いで、全体に自然な一体感が生まれています。

留を開いた画像

カバー側に留め具を付けて全体を包む構造に。開けたときの動作もスムーズで、灰皿の出し入れもしやすくなっています。

平置きの正面水平からコバを撮影

革を四層に重ね、しっかりとコバを整えて磨き上げています。端の丸みと厚みが共存する仕上がりです。

平置きの横からコバを撮影

斜めから見ると、コバにかけた光沢感や革の自然な表情も伝わります。


仕立てへの考え方

ご要望をお聞きしたうえで、使う場面を想像しながら、自然と形や仕立ての順が決まっていくようにしています。
革の厚みや質感、道具の手の入り方などを思い描き、頭の中で何通りかの構造を組み立ててから、実際の製作に入っています。

手に持っている画像

完成したものは、手に収まるサイズ感と、柔らかさの中に凛とした佇まいを持っています。


携帯灰皿カバーという発想

市販ではまず見かけないアイテムですが、「こういうものがあったら使いやすい」という気づきに応えるのも、ものづくりの役割だと思います。

仕様を詰めていく面白さ、仕上がって喜んでもらえる瞬間。
今回のようなご相談があったこと自体が、作り手として何よりの喜びでした。


最後に

必要とする人にとって、ちょうどよく馴染む“ひとつ”をかたちにする。
そうしたものづくりを、これからも続けていきたいと思っています。

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