
オーダーメイド製作記|携帯灰皿カバーを仕立てました
先日、工房にふらりと訪ねてくださったご近所のお客様から、少し変わったご依頼をいただきました。
携帯灰皿を入れるための「革のカバーを作ってほしい」という内容です。
携帯灰皿そのものではなく、その“カバー”を革で仕立てるというご相談は初めてで、なるほど、そういう使い方もあるのかと感じました。
形は灰皿に合わせて、一から設計
灰皿の存在が見えにくく、手に持ったときの収まりも良いように、全体を覆う構造で設計しました。
角をなめらかに整え、厚みとのバランスを取りながら手馴染みの良さを意識しました。
厚みを活かしたコバ構造
ご希望により革はプエブロのブラックを使用し、糸も同系色で統一。
丁寧な手縫いで、全体に自然な一体感が生まれています。
カバー側に留め具を付けて全体を包む構造に。開けたときの動作もスムーズで、灰皿の出し入れもしやすくなっています。
革を四層に重ね、しっかりとコバを整えて磨き上げています。端の丸みと厚みが共存する仕上がりです。
斜めから見ると、コバにかけた光沢感や革の自然な表情も伝わります。
仕立てへの考え方
ご要望をお聞きしたうえで、使う場面を想像しながら、自然と形や仕立ての順が決まっていくようにしています。
革の厚みや質感、道具の手の入り方などを思い描き、頭の中で何通りかの構造を組み立ててから、実際の製作に入っています。
完成したものは、手に収まるサイズ感と、柔らかさの中に凛とした佇まいを持っています。
携帯灰皿カバーという発想
市販ではまず見かけないアイテムですが、「こういうものがあったら使いやすい」という気づきに応えるのも、ものづくりの役割だと思います。
仕様を詰めていく面白さ、仕上がって喜んでもらえる瞬間。
今回のようなご相談があったこと自体が、作り手として何よりの喜びでした。
最後に
必要とする人にとって、ちょうどよく馴染む“ひとつ”をかたちにする。
そうしたものづくりを、これからも続けていきたいと思っています。